野生の芳香植物栽培にこだわる、ニコラさんの農場 第1話 〜フランス〜

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野生の植物を愛し、とことん研究し続ける、若き農場主。

2018年6月20日〜7月5日までの約2週間、フランスとイギリスの農場やアロマショップ、植物園などを回り取材をさせていただきました。

フランスでは、強いこだわりを持って芳香植物を栽培・蒸留している農場や、精油の成分分析を厳格に行っているアロマショップを訪れ、彼らが暮らしの中に力むことなく自然にアロマやハーブを取り入れている姿にとても刺激を受けました。

イギリスでは、ベジタリアン&ビーガンレストランや、世界遺産の王立植物園を訪れ、たくさんの貴重な経験をすることができました。

これから何回かに分けて、現地での写真の一部をご覧いただきながら、どのように芳香植物を育てて蒸留しているのか、植物療法にどのようなこだわりを持っているのか、現在のフランスやイギリスのアロマやハーブ事情はどのようになっているのかなどを、少しずつご紹介できたらなと思っています*

** 野生の芳香植物栽培にこだわる、ニコラさんの農場 第2話 〜フランス〜 **

ニコラさんの農場へと向かう道

この日訪れたのは、野生の芳香植物栽培にこだわるニコラさんの、冒険心に満ち溢れた農場です。

こちらも、メオさんご夫妻の農場と同じドローム県にあるのですが、メオさんのところよりもかなり標高が高い場所になります。
ヴァランスという比較的大きな町から、車で2時間くらいかけて行ったのですが、ひたすらクネクネした山道なので、激しい車酔いでフラフラになりながら向かったのでした。。。

ニコラさんの農場付近

やっとのことで着いたのは、この写真のような場所。
大変な思いをして着いたわりには、のどかで優しい植物や動物たちが迎えてくれるわけでもなく、ワイルドすぎる原野のような場所で、思わず「この農場を選んで大丈夫だったかな・・・?」と不安になってしまいました(笑)
でもよく見てみると、あえて過酷な環境にさらされた土地からは、生命力豊かな植物たちがたくさん芽吹いているのです。

農場主のニコラさん

農場主のニコラさんは、当時まだ36歳。
とはいえ、16歳から水蒸気蒸留の技術は身につけていて、28歳で自分の農場を4つ買い、8年間かけて少しずつ山や森の中に生えている野生の芳香植物を畑に移して、丁寧に栽培をしているそう。

品種のグレードが高いことがあらかじめわかっている種や苗から育てるのではなく、なぜ野生の種類にこだわって栽培をしているのかを聞いてみました。
すると、メオさんご夫妻と同じような答えが返ってきました。

野生の植物たち

「野生の植物は風雨にさわされ、過酷な条件で育っています。
だから、自分たちが絶滅しないように、身を守ったり虫を呼び寄せて受粉をしてもらったりするための芳香成分をたくさん作ります。
そんな強い品種を畑で増やしていくことで、有用な成分がたくさんつまった植物を育てることができるのです。」

野生で生えていた時となるべく同じような環境にするため、ここでは肥料も家畜の糞しか与えていません。つまり化学的な肥料は全く使わないということです。
でも、最初はその糞を集めるのが大変で、購入するととても高くつくので困っていたそうです。

そこで彼は、自分の農場の牧草を近所の牧場の人々に家畜の餌として分け、その代わりにその家畜たちの糞をもらうという物々交換をし始めました。
ここでも、メオさんご夫妻の農場と同じように、近くの畜産農家やワイン農家などと協力して地元の生産力を高めていこうとするポリシーを感じることができました。

フレーヌ(トネリコ)の木

畑の中にはこんな風に、所々に突然ポツポツと木が植えられています。
これは、木の葉や茎などの腐ったものが肥料になり、根が這うことで水はけの調整にも役立ってくれるからです。

この木はフランス語ではフレーヌと呼ばれ、日本名は「トネリコ」です。
フレーヌは、北欧の神話では「混沌の時代からすべての世界を支える木」とされていて、生命の象徴ともされているそう。
それもあって、何本ものフレーヌをあえて畑の中に植えているんですって。なんだか、素敵ですよね*

さて、ここからは農場を見て回ります。
まずは、タイム・リナロールから。

タイム・リナロール

もともと山に生えていた野生のものを畑に移し、今はこの地の標高や日照時間に耐えられるかどうか試しながら育てています。
そして、刈り取り時には成分分析をして、きちんと「タイム・リナロール」というケモタイプで販売できるのかを確かめています。
本来は剪定をしっかりしたいところだけれど、今年はまだ山から移植してからあまり経っていないので、あえて剪定はせずに様子を見ていくそうです。

カレンデュラ

こちらは1件目の農場でも見た、カレンデュラ。
メオさんご夫妻のカレンデュラは優しく甘い香りと柔らかくしなやかな花びらが特徴でしたが、こちらはまるで雑草のようにピンと強く、ワイルドな香りがしました。
環境や育て方が変わると、同じ品種の植物でも個性がかなり違うのだなと実感しました。

まだまだ続く農場の旅。
少し長くなってしまったので、この続きは第2話でまたお伝えをさせていただきますね。

** 野生の芳香植物栽培にこだわる、ニコラさんの農場 第2話 〜フランス〜 **